去年の6月のこと、失恋の腹いせに入会した「清純いもうと倶楽部」というサイトで、チャームキッズというプロジェクトを知った。


 うきうき〜ずの北海道旅行、秋葉原探検隊、ケーキパニック2、それらの映像はある一人の女の子の成長記のように思われた。字幕や効果音等による、時として悪ふざけの度が過ぎる編集の中にも、語られないメッセージがこめられている気がして、僕はそれらの映像を夢中で見直した。「隊長」と呼ばれている子が、少しずつ自分のポジションを見つけ、様々なアクションで感情を表現するようになるその姿は、これまで見てきたどんなストーリーよりも興味深いと思った。


 「おいも屋本舗」という店がオープンするのに合わせて、そのような考察をブログで書けば良いと考えた。「はてな」だと、キーワードリンク機能があるるから、宣伝活動に労力を費やす必要がない。「はてな」つながりで、おいも屋本舗のブログから読者が流れてくるかもしれない。こうして、気ままに始めてみたこのブログ。ただの趣味にすぎず、ジュニアアイドルを話題にするというやましさは、なかなか消えなかった。


 その頃、チャームキッズは「夏合宿」という企画を行おうとしていた。事務所スタッフも、撮影スタッフも、そして参加した女の子たちも、悲鳴をあげたこの企画、リアルタイムで味わうことができたのは幸運だった。その後の事務所のブログで、何かが変わった彼女たちがいたが、それが映像として提示されるのには、かなりの時間がかかった。最初に公開された「本編予告編」は、それこそ混沌のきわみであり、方向性を定めることへの迷いが感じられた。これは「商品」になりうるのか? そんな苦悩すらうかがえたこの企画が完結するのには、数ヶ月を要することになる。その経過を、僕は視聴者の一人として見守った。もともと、チャームキッズの女の子のファンであるはずなのに、それをいかに表現しようか模索する製作スタッフのファンにもなりつつあった。


 他のブログでは、毎週行われる「おいも屋本舗」イベントのレポートが面白おかしく語られている。遠い地方に住み、仕事もほとんど休みがなかった僕には、そんなレポートを書くことはできない。「妄想」とブログ名に名づけたのは、実証できないからである。しかし、実際に見ないほうが美しいものもある。無知ほど幸せなものはない。


 ただし、僕はつきつめないと気がすまない性格である。おまけに、合宿前後から注目するようになった別の女の子がいて、彼女の行動には「ああ」とため息をつくことが多かった。気のきいた台詞も言えず、仲の良いふりもできず、だけど、みんなと一緒に何かをするのが嫌いなわけではない。動画のふしぶしに、そんな彼女のどうしようもなさが伝わる。その子がどんなふうに成長するのかが気になって気になって仕方なかった。やるなら、All or Nothing。ゼロか全てか。去年の末、このブログを終わらせて、ジュニアアイドルと無縁の日々を送ろうと決断した。僕のまわりの環境は、ファンであることを許さないような状況にせまられていた。


 結局、それをあきらめたとき、選択は一つしかなかったのだ。2月に仕事を辞めることを打ち明け、3月には週末に上京する日々を送った。「おいも屋本舗」の常連客には僕のブログを見ている人がいたらしく、それをもとに交流することもできた。


 しかし、4月にある提案がきた。それは悪くない話だった。とても、悪くない。ただ、それは「妄想」が「妄想」でなくなることを意味していた。ファンであるかぎり、いくら実際に会ったとしても「妄想」は「妄想」だ。僕はためらった。このブログにも愛着はあるし、その悪くない話が両立できるのなら、そうしたかった。


 それを不可能にさせたのは、ある人との対話だった。その人と、僕が気になっていた子のことをまじえて、ひたすら話した。その話を終えたとき、僕はこちら側、つまり、ファンの視点で語ることができなくなった自分を発見した。


 その子の成長記は今もなお続いている。その結果がどうなるかわからない。実は僕を含め、多くの人間は、今の彼女の不器用さをこよなく愛している。ただ、それが変わらないと願うことは、子供がいつまでも子供であることを願うようなものだ。女の子には、それぞれピークがある。そのピークがいつやってくるのか、いつ終わるのかは誰にもわからない。ジュニアアイドルのファンになって、その輝きの意味を知るようになった。ピークというのは過ぎ去ってみないとわからない。


 その輝きをうまく表現できたらと思う。何物の権威を借りずとも、ただ美しさがそこにある、そんな偉大なる季節を、いつでもよみがえらせることができるような。それが存在したことをリアルな感触をともなうように、いつまでも残すことができるように。


 それを追いかけるために、僕は前へ進む。


 このブログは長文にも関わらず、読者の反応は筆者の意図とぶれてなくて、恵まれた方々に囲まれた、とても幸せなブログでした。


 今度、皆さんと会うときは、もっと厳しい目で見られることでしょうが、このブログで感動させたこと、ガッカリさせたことを忘れずに、自分の足で歩きたい。


 今後、ファンとして皆さんと交わした約束は、すべてご破算になりました。心から謝罪します。実は上京してから気兼ねなく付き合えた仲間を、早くも失ってしまうことになったのですが、それを嘆くことは許されないでしょうね。まあ、厳しく批判してやって下さい。それで折れたら、僕はそれまでの男ですから。


 ご愛読、ありがとうございました。