一ノ瀬あきほイベントレポート(完全版)



 ということで、おいも屋本舗で行われた、一ノ瀬あきほイベント、参加してきました。


 以下、そのレポート。

11時30分


 前日に店員の方に「イベントって、一時間ぐらい前に来たらいいんですかね?」と、初心者な発言をしてしまった僕。「ハァ?」という顔をされたのも当然だろう。近くのミスター・ドーナッツで時間をつぶしてから、三十分前においも屋本舗に入る。


 お客さんの入りは五人ぐらい。思ったより少ない。12:00からという開始時刻、一ノ瀬あきほというタレントブランドでは、これぐらいの集客力なのだろうか。


 昨日、くまなく店内は観察しているので、「もの」はすっかり見終えた。こっそりとお客さんを見てみる。年齢層は予想していたよりずっと高い。僕は二十代後半だが「最年少」と自称してもいいぐらいだったのではないか。


 おいも屋本舗では、いわゆる「18禁商品」を置いていない。だから、18歳未満の人でも気軽に立ち寄れる店、ということには、なっている。ところが、今朝立ち寄ってみた石丸電気に比べると、客層がずっと高くなっているのだから面白い。「18禁商品」を排除したことにより、そういうものに関心ある若者たちを遠ざけてしまったのだろうか。決して、若者が立ち入りにくい店、というのではないと思うけれども。
(ただし、あの薄暗い階段に足を踏み入れるのは、ちょっとした勇気が必要だと思う)


 視聴覚室でイスに座っている方々は常連さんだろうか。じっくりとDVDを鑑賞している。他のお客さんもマイペースで商品を選んでいる。イベント前というのに、あわただしさを感じさせない店内。僕だけが唯一緊張しているみたいだ。


 他のお客さんにとって、これは「いつもの土曜日」なのだろう。一ノ瀬あきほも「チャームキッズの数多きレッスン生の一人」にすぎないのだろう。しかし、僕にとっては違う。今日は記念すべき初イベント。そもそも、僕はアイドルのイベントに参加したことすらないのだ。一ノ瀬あきほちゃんについても、「あっきー」という他の追随を許さない(つまり、誰も呼んでいない)愛称をつけているぐらいなのである。店の雰囲気がどうであれ、僕にとっては特別な一日なのである。この3月3日という日は。

11時50分


 イベント10分前になると、店内の配置替えが始まる。



おいも屋公式ページより借用


 イベントブースを確保するために、ついたてが設けられる。慣れた手つきで作業は進められる。開店から半年あまり、さすがである。


 しかし、店内入口からは、イベントブースの中がちょっとだけ見える。さりげなく移動し、様子をのぞいてみると…、


 壁にはられたポラロイド写真を見ながら、はしゃぎまわっている女の子を発見!


 もちろん、あっきーこと一ノ瀬あきほちゃん。ちっちゃい! かわいい! 写真そのままだ! と当たり前のことに感動。服装も僕好みのボーイッシュスタイル。イエー!



 しかし、のぞき見は良くない行為。そもそも、あっきーが楽しそうにしているのは、お客さんの目が届かないからなのだ。視聴覚室にいる常連らしき方々は、この期に及んでも微動だにしない。そわそわしているのは僕だけである。


 店内の商品を手に取ったりしてみるが、時計ばかりが気になる。お客さんの中には、今になって商品を購入し、参加券をもらっている人たちもいる。
(ちなみに、僕は前日に5000円券を入手済)


 やはり、三十分前に来たのは早すぎたようだ。手は汗でびっしょり。イベントで握手するとき、変なふうに思われたら嫌だな、とポケットを調べるが、ハンカチはない。仕方ないので、手をぶらぶらさせて自然乾燥。間違いなく、店内では浮いた存在だっただろう。


 ちなみに、開始時刻もせまってきたということで、お客さんの数も増えてきた。それでも、十人ぐらいか。相変わらず、年齢層は高い。初イベントという緊張も重なって、常連さんからすれば、僕なんて「若造」にしか見えなかっただろう。

12時00分


 「イベントはじまります」という店長さんの声とともに、ついにイベントは始まった。


 といっても、店内のお客さんの動きは、ほとんど変わらない。二、三人がふらふらとイベントブース入口に向かっていく。僕もその一人である。


 中に入る。中央でイスに座っているのは、もちろん、イベントの主役、一ノ瀬あきほちゃん。その隣にいるのはマネージャーだが、僕の予想に反してYマネさん(女性)だった。松本あやかDVDでおなじみのSマネさんと初遭遇できるかと思っていたが、その願いはかなわなかったようだ。


 しかし、Yマネさんはとても話しやすい雰囲気を持っている。緊張している僕は、ついついYマネさんを見てしまう。言葉もあっきーにではなく、なぜかYマネさんに向けてしまう。


「へえ、二色使って、サイン書いてるんですね。他の子はこういうことしませんよね?」


 丁寧にサインを書いてくれているあっきーの頭上で、Yマネさんに軽口をたたく僕。何だか、偉そうな感じだ。よくある、子供を無視した大人のひそひそ話みたいである。いやいや、俺はマネさんに話すために、遠いおいも屋に来たんじゃないぞ、と思ってみても、気持ちに余裕がないせいか、どうでもいいことをついつい口に出してしまう。


あきほ:名前はどうしましょうか?
僕:(マネさんに向かって)カジモト、でお願いします。


 最近になって、ハンドルネームを主張するようにしたのは、サインに「班長」と書いてもらうなんて、初心者の僕に言えるはずがないと気づいたせいである。かといって、別の名前で書いてもらっても、ブログ上で「行ってきたよ!」という証明にはならない。だから「カジモト」という、はてなIDそのままのハンドルネームを急きょ設定したというわけだ。


 しかし、あっきーの声はとてもいい。今でも耳に残っているが、しっかりとした、凛とした声である。実は聞きたかった質問の一つに「ポージング・ダンス・演技の中で、どのレッスンが一番好き?」というものがある。個人的には、演技の勉強を好きになってほしいと思う。そして、舞台の上で、あの声を聞かせてもらいたい。


 イラストは「ミニー」を描いてもらう。が、ちょっと縦長になってしまった。苦笑いする僕と、不本意そうなあっきー。なかなか負けず嫌いなところもあるようだ。チャームでがんばるためには、それぐらいがちょうどいい。


 こうして、2ショットチェキを撮り終えて、イベント終了。固い握手をしてもらう。ちなみに、あっきーは両手だが、僕は片手。これってどうなんだろう? やっぱり、こちらも両手でにぎるべきなのだろうか。でも、なんかいやらしく思われたら嫌だし。


 平静をよそおうことに必死で、場に流されたまま、終わってしまった初イベント。このまま帰ることができるのか、と問われたら、答えはノンである。イベント参加者は多くない。これは、二周目もいけるんじゃないか。


 イベント参加に必要な1500円以上の商品を探す。あまり、無駄な買い物はしたくない。悩んだあげく、購入を決めたのは「チャームキッズ スペシャルムービークリップ集」。


12時15分


 おいも屋のイベントブースの中は次のようになっている。



 今度は、イスに座って、前の人(常連さんらしき方)のやり方をじっくり参考にしようと考えた。
(かなり迷惑だったと思う。ごめんなさい)


 やはり、場慣れした様子で、場の雰囲気がやわらかくなっている。これが、常連の力か、と感心する。


 イベントブース内にいるのは、だいたい次の五人である。
(待っているお客さんはのぞく)


タレント・マネージャー・店員(カメラ係)・店長・客


 僕の場合、「得体が知れない」客である。マネージャーは、タレントを守ることが第一義務である。お客さんを疑うのは良くないことと言え、タレントの子を傷つけるような、また戸惑わせるような発言は、断固として制止しなければならない立場である。


 しかし、勝手知ったる常連さんには、そのような警戒心を抱くこともない。安心できる相手なのである。場の雰囲気が和らぐのも当然だ。


 そして、子供は自分を保護してくれる大人の気持ちに敏感だ。例えば、お笑い好きな人は「ギャグでなく、場の空気で笑っている奴が多い」とよく文句を言うが、そういう場を作れるということは、ギャグセンスよりも大切な芸人の才能である。自分の小学生時代を思いだすといい。「この芸人はセンスがいい」なんて思いながら、お笑い番組を楽しんでいただろうか? みんな笑っているから、つられて笑う。それでも楽しいのが子供時代なのである。


 つまり、常連さんは、マネージャーと店員から「安心できる相手」と認められていることにより、タレントの子の心を開きやすくなっているのである。


 こればかりは、初参加の僕にはどうしようもない。場慣れしている常連さんは、僕みたいなとんちんかんな軽口をたたくこともない。


 そして、もってきたバッグをごそごそと開ける常連さん。


「これ、プレゼントなんだけど」


 この光景を見て、僕は頭をかかえた。そうか、プレゼントか。


 ちなみに、このイベントについて、あっきーの感謝コメント。



 そう、イベントに参加するだけではダメなのだ。プレゼントがなければ。


 わざわざプレゼントを渡してまで気をひく必要があるのか、と思われる人もいるかもしれない。僕もその一人だった。誕生日イベントならともかく、普通のイベントでプレゼントを渡しても、タレントの子にとっては「重荷」になることもあるんじゃないかと。


 しかし、それは間違いである。


 そもそも、タレントの子の目の前で、サインを描いてもらっている、あなた。あなたはその子にとって、どういう存在なのだろうか?


 もちろん、あなたはお客さんである。お客さんはエラい。あたりまえのことだ。事務所でもそういうことはきちんと教育されているはずだ。だから、タレントの子は、礼儀正しく対応してくれる。


 だが、それは「先生と児童」みたいな立場でしかない。「先生、おはようございます」と同じようなものだ。人間関係にあいさつは欠かせないが、そういう「気持ちの良いあいさつ」だけで、あなたは満足できるのか?


 別に高いものでなくてもいい。300円以内のものでいいのだ。常連の方はともかく、勝手の知らない初心者の人は、ポケットにおさまるぐらいのアクセサリーで良いと思う。


 それは記念品になる。


 実際、イベントに参加して、僕の手元にはサイン色紙とポラロイド写真(チェキ)が残った。しかし、タレントの子の手には何も残らない。でも、プレゼントがあれば、おいも屋でサイン会をした、という事実を残すことができる。がんばって仕事をした証拠になる。


 そういう点で、僕は非常にめぐまれた立場にあった。なぜなら、田舎者だからである。例えば「ご当地キティー」。47都道府県、それぞれでしか買えないものである。


 もし、これを渡していたらどうだろう? 「わざわざ○○県から来てくれた」という、色あせない記録になったのではないか。事務所で仲良しの子に自慢することもできる。「へー、あきほちゃんには、○○県から来るファンがいるんだ。すごいなあ」と思われる。良いことづくめである。


 もちろん、イベントをしているその場でも、これを機に話をすることができる。女の子の方はともかく、マネージャーは絶対に何かをきいてくれる(はずだ)。


 あと、この日は3月3日、ひなまつりである。これをネタにしないわけにはいくまい。桃のストラップなんてものがあればいいだろう。そうすれば、3月3日においも屋でイベントがあったことを、ずっと覚えてくれるはずだ。


 その子が実際に使ってくれるか? なんて心配することはない。そんなセンスがあれば、それにこしたことはないが、何度もイベントに参加している子ならともかく、今回の一ノ瀬あきほちゃんのように、イベント慣れしてない子からすれば、「おいも屋で仕事」というのは、遠足のようなビッグイベントである。遠足のみやげものと同じノリでいいんじゃないかと思うのだ。だいたい、女の子の部屋はアクセサリーがいっぱい。そこに自分の買ったものが飾られていると考えるだけで、幸せではないか。


 こんなすばらしいチャンスを、僕はフイにしてしまったのである。これから参加する人よ、おいも屋イベントに参加に必要なのは、お金と時間だけではない。プレゼントは必須アイテムである。でないと、後悔しますよ、僕のように。


 そんな悔恨の念にかられている僕の目の前で、常連さんはそつなくイベント終了。そして、最後の2ショットチェキで、とったポーズがこれ。



↑この画像はイメージです


 そう、二人で一つのハートマーク、その名もずばり「フュージョンハート」


 ちなみに、一回目の僕は、2ショットというのに、サイン色紙を両手で持って映った。改めて、ポラ写真見ると、あっきー、ちょっと困ってるみたい。


 そう、2ショット=フュージョンハート、3000円以上の参加券を購入する人たちの目的は、「その子と一緒にフュージョンハートをする」ことなのである。



おいも屋公式ページより借用


 そんなこと恥ずかしい、と思う人もいるだろう。僕もそうだ。というより、自分がフュージョンハートをするなんて、考えすらしなかった。


 しかし、目の前の常連さん、明らかに僕よりも年上である人は、何のためらいもなく「フュージョンハート」。「恥ずかしい? おいも屋まで来て何言ってるの?」と言わんばかりである。


 プレゼント、そしてフュージョンハート。そんなおいも屋の常識すら知らずに、イベントに参加してしまった僕。そして、2周目とはいえ「サイン&握手」だけの1500円券。もう戻ることはできない。


 イスに座る。マネさんはあっきーに語りかける。「ほら、あの人」


あきほ:○○さんですか?


 残念!


 プレゼントを渡さなかったことが響いたのか、名前を覚えてくれなかったようだ。だいたい「カジモト」って名前、親しみにくい。


 ちなみに、今回のイベントに参加した方々は、初心者まるだしの僕を特定できたと思う。あんまり特徴のない男だと思われたのではないか。容姿といい、服装といい「没個性」が僕のテーマみたいなものである。


 それだから、名前を忘れられても仕方ないと思った。あっきーもまだまだイベントに慣れてないし、きちんとサインを描くのに夢中で、僕の顔を見る余裕なかったんじゃないか。


 もし、覚えてもらいたければ、目立つ格好をするべきなのだ。


 僕はそうわりきっていたのだが、当のあっきーは、これで大いに動揺した様子。「ファンの方の名前も覚えられないなんて」と自己嫌悪におちいってしまったのかもしれない。サインを描く動きに余裕がなくなっている。


 ここで、僕が気をきかせたことが言えたのなら良かったのだ。しかし、そんな言葉が思い浮かばず、リラックスムードとは、ほど遠い雰囲気。イラストの要望も聞かずに、マッキーを動かすあっきーと、ただそれを見ている僕。


 こうして「ありがとうございました」と握手をして、2周目のサインは終わった。

〜13:30


 はぁー、と大きなため息をつく。こんなはずじゃなかったのになあ。二枚のサイン色紙を片手に、僕の心は沈む。


 別に怒ってたわけじゃない。そりゃ、アフロにサングラスをかけて、それでも名前を覚えてくれなかったら、ちょっとぐらいは怒ったかもしれないけど、さして特筆すべきところのない外見と、「カジモト」という珍しくもない名字。忘れてしまっても仕方ないと思う。


 それよりも、焦っているあっきーを落ち着かせることができなかったのが残念だった。


 このまま帰るわけにはいかない、と思った。しかし、三周するとなると、明らかにスタッフやマネージャーに嫌われるんじゃないか。店内にいる常連の方々にも「三周ループもしてるよ、あいつ」とかげでコソコソ言われているかもしれない。


 しばらく、店内を歩くことにする。もし、三周目に行くなら、何を買うべきだろうか、と考えながら。今度は、フュージョンハートしたいから、3000円以上買わないとなあ。でも、また行っても、みんないい顔しないだろうなあ。


 ついたての向こうから、あっきーの甲高い笑い声がする。その楽しそうな声も、僕の心を晴れやかにしない。いったい、イベントブースでは、どんな会話があるのだろう。常連さんが僕の知らないテクニックを駆使して、あっきーを笑わせてるんだろうか。


 しばらくして気づいた。そっか、誰もお客さんいないからか。


 ちなみに、今回のような、参加者の少ないイベントの場合、他人がイベントをするときに、イベントブースの中に入るのは、あまり良いことではない。常連さんの間では「紳士協定」が結ばれていて、出てきたのを確認したあとで、中に入っていた。「どんなふうにしているのか知りたい」と、あえて常連さんの後にくっつくように入った2周目だったが、どうやら紳士協定に反していたらしい。これでは嫌われても仕方ない。ごめんなさい。


 しかし、それよりも、気づいたことがある。僕はイベントが始まるまで「店内で緊張しているのは僕一人」だと思っていた。しかし、あと一人いた。


 イベントの主役、一ノ瀬あきほちゃんである。


 あっきーだって、緊張していたのだ。せっかく自分のイベントに来てくれた人に、嫌われないように、きちんとあいさつしたり、丁寧にサインをしたり。それなのに、僕は自分のことばかり考えていた。あっきーをリラックスさせることなんて、思いもつかなかった。プレゼントを用意しようと考えなかったのが、その気持ちのあらわれである。


 あなたは言うかもしれない。そんなの当たり前のことじゃないか、と。こちらはお客さん、相手はタレント。こちらはお金を払っているんだから、相手が緊張してるとかそんなことを考えなくてもいいんじゃないか、と。


 しかし、相手は小学生の女の子なのである。


 なぜ、僕はおいも屋に来ているのか。なぜ、僕は一ノ瀬あきほイベントに参加しているのか。それは、「アイドルのサインをもらう」ことを目的としているのではない。「がんばってる小学生の女の子にサインをもらう」とした方が近い。その子のプロ意識に感激するのは、それはそれで良いことだけれど、今回のように名前を覚えてなかったために動揺してしまった姿を見るのも、このおいも屋イベントならでは、だと思っている。


 そのとき、僕は何をしていたか。ただ、突っ立っていただけだったように思う。何か言葉はかけたかもしれないが、あっきーからすれば、頭上にそびえたつ怖い大人という印象を与えたかもしれない。それが、プレッシャーになり、あんな不本意なサインに終わってしまったのだ。


 つまり、自分がイベントに参加することに舞い上がって、相手のことなんて全然考えてなかったのである。こちらはお客さんという優位な立場にいるわけだから、何らかの心づかいを見せて、場をなごませることはできたはずなのに。


 パーティションの向こう側では、どんな会話が交わされているのだろう。イベント開始10分前に見た、壁にはられていたポラ写真を見て、はしゃいでいる、いつものあきほちゃんに戻っているのだろうか。お客さんがいない方が楽しいんだったら、三周目なんてしなくてもいいじゃないか。所詮は僕の自己満足にすぎないんだから。


 ちなみに、帰りの新幹線のチケットは買ってある。タイムリミットは13時30分。まだ時間は残っている。店内を見渡す。お客さんの数も増えてきた。20人ぐらいになっている。視聴覚室に集う人も増えている。これが常連の方々の社交界なのだろうか。僕のウワサをしていなければいいのだが…、と思う。


 しかし、イベントブースに入る人は、ほとんどいない。一ノ瀬あきほって子に、多くの人はそれほど興味を持っていないみたいだ。


 確かに、お客さん相手にするより、マネージャーさんや店内スタッフと話しているほうが気は楽だろう。でも、あっきーがおいも屋に何をしに来たかっていえば、サインをするために来ているのであって、一人でも多い方が良いに決まっている。


 僕は意を決した。よし、三周目に行こう。嫌われるかもしれないけど、いいじゃないか。冷たい目をされても、いいじゃないか。三周ループするような馬鹿なファンがいることを知ってもらうだけでも、「応援してる」って気持ちは伝わるんじゃないか。たぶん、次もうまく話せないだろうけど、「サインをもらいに来た」という姿を見せることで、僕の名を忘れてしまった2周目のことも、苦い記憶のまま残らないんじゃないか。


 一時間近く悩んだ末、僕は新たに商品を購入した。「放課後放送局〜Part1〜」と「放課後放送局〜Part2〜」。合計金額は4100円。これで、3000円の参加券を入手する。


 どうして、3000円以上なのか、というと、「フュージョンハート」をするためである。せっかく来た、おいも屋イベント。後悔だけはしたくない、と僕はイベントブースの中に三たび足をふみいれた。

13:30


 三度目、ということで、気持ちに余裕ができたのだろう、あっきーの後ろに置いてあるイラストを発見する。



マネ:何も見ずに描いたんですよ
僕:すごいですねぇ。どれぐらい時間がかかったんですか?
店員:10分から15分ぐらいですかねぇ。


 相変わらず、マネさん相手の会話。あっきー相手に「イラスト、うまいね」とほめることすらできない不器用な僕。でも、仕方ないじゃないか。どんなふうにしゃべったらいいのか、まだわからないんだから。ただ、その気持ちを伝えることはできたんじゃないか。


 ちなみに、名前は「Qさんへ」に変えた。「quazimoto」の「Q」である。マネさんに「カジモトのQです」と言うと、「ああ、Qですね」と即答してくれたのだが、ふつう「K」じゃないのか?


 まあ、「Qさん」なんて、他にいそうな気がする。他のブログで「Qさんへ」と描いたサインを見た気がする。でも、「カジモト」よりは覚えやすいだろうと思った。まあ、どうせだったら「オバケのQ太郎」みたいな部分があればいいのだが、残念ながら僕の外見は特徴ナシ。どこにも「Q」の要素はないのだが、あっきーは「カジモト」と書くよりは楽しそうに「Qさんへ」と書いてくれた。


 そして、フュージョンハートの2ショット。パチリと撮り終えて、最後に握手。これがどうしても、両手でできなかった。一回目から三回目まで、あっきーは両手で、僕は片手。ハンカチ持ってくれば、きちんと汗をふいて、両手で握りかえすこともできただろう。本当に何も考えずにイベントに来たなあ、と思った。


 結局、「レッスンがんばってるよ」とも「スプリングフェスタ期待してるよ」とも言えなかった。三周したのにもかかわらず、僕のことなんて、まったく伝えることができなかった。でも、三周目のサインを決意したのは良かった。少なくとも、今できることはやったんだから。イベントブースを去るとき、本当なら両手を大きくふって「バイバーイ」と言ってみたかった。


 時計を見ると、13時30分をこえていた。14時には新幹線に乗っていなければならない。なごりおしいが、駆け足でおいも屋を出る。満足だったか、と言われれば、僕は首をふるだろう。「初めて」だらけのイベント、僕のやったことは、知らずのうちに、他のお客さんや、店のスタッフや、マネさん、そして一ノ瀬あきほちゃんに迷惑をかけたかもしれない。それでも、次の気持ちがゆらぐことはなかった。


「イベントに参加して、本当に良かった」

追記


 さて、おいも屋イベントに初めて参加する場合、人気の高い子にするべきか、人気の低い子にするべきか、どちらがいいのだろうか?


 一ノ瀬あっきーのような、まだ知名度の低い子の場合、イベントブースをひとりじめできる。
(紳士協定をやぶらなければ)


 これは初心者にとっては、長所でもあり短所でもある。長所はちょっとぐらい変なことやっても他のお客さんの迷惑にはならないこと。短所はどうふるまえばいいのかわからないこと。


 また、人気の高い子だと、3周ループなんてできないだろう。でも、今回のように余裕のあるイベントの場合、心置きなくサインがもらえる、という利点がある。


 いずれにせよ、実際にイベントに参加しないとわからないことは多い。僕もいろいろ失敗したが、それは次のイベントの糧になるだろう。


 そう、実は今回で最初の最後のつもりだったのだが「行かずにおれるか!」状態になってしまったのだ。今度はプレゼントを用意して、リラックスムードでイベントブースを包みたい。あの人、また来てくれないかな、と思われるような(←希望的観測)


 しかし、今度の一ノ瀬あきほ参加イベントといえば、



と、総勢5人が待ちかまえる大イベント。


 5人全員にプレゼントを用意しなければならない、というわけで、うちの地方の「郷土おみやげ」でも持って行こうかな、と考えています。帰りの車内で食べれるようなものを。あと、あっきーだけにはもう一つ用意して、他の四人と差をつけたりとか。


 そう、あくまでも「一ノ瀬あきほファン」であることを、他の子に伝えなくてはならないわけですから。


 そんな感じで、もっといろんなイベントに参加しよう、と思っております。撮影会にも出てみたい。カメラなんて持ってないけど、どういう雰囲気なのか味わってみたい。


 確かに、東京は遠いけど、これだけで終わってしまうのも悲しいし、これまでせっせとたくわえてきた妄想がいろいろ打ち砕かれたのも良かった。これまで「見当違いな妄想ばかりたれ流しているブログ」と思われていたでしょうが、今回のイベント参加で、ちょっとだけ、妄想が現実寄りになるんではないかと思います。


 とりあえず、おいも屋に行こうか迷っている人は、絶対に行くべきです。もし、幻滅したとしても、それはそれで有意義なことでしょうし。


 今回のレポートが、一人でも多くの迷っている方に「よし、おいも屋に行こう」と決意させるきっかけになったらいいな、と思って、書いてみました。相変わらず、長くなってしまったんですが、何事も「初めて」のあとが、一番幸せなときなんですよ。そういう気持ち、うまく伝わったでしょうか?