山中劇場 第1話
*この文章はフィクションであり、実際にその名を持つ下の姉妹とは、何ら関係なく、特に名誉を毀損する目的など毛頭ないことをここにお断りしておきます。
・山中劇場 第1話 「もりあげ隊長」
真由美: ……ひま。
知恵: …………(漫画を読んでいる)
真由美: ヒマ!
知恵: …………。
真由美: …………(バシュッ!)
知恵: ……いったぁ! なにするのよ。
真由美: だ・か・ら、ヒマって言ってるじゃん。
知恵: だ・か・ら、なんでノートぶつけるの。
真由美: 姉がヒマだったら、なんかするのが妹じゃん。
知恵: そんなわけないでしょ。もう、姉ちゃんは人のジャマばっかりするんだから。
真由美: あーあ、最近調子にのってますねぇ、知恵サマは。昔のアンタはこうじゃなかったのにねぇ。
知恵: 昔っていつ?
真由美: ほんと、かわいくなくなったんだから。
知恵: え? マジ? どこらへんが?
真由美: 妹として。
知恵: なーんだ。
真由美: なに、ため息ついてんの?
知恵: ……だって、最近、いろんなことがいろいろ変わって、自分でもわけわかんなくなったりするときがあるし、ほんとにかわいくなってるのか、不安になったりとか。
真由美: はいはい、そんなに悩んでるんだったら、この姉にかわいらしいポーズでも見せてちょーだい。
知恵: やだ。
真由美: ……まったく、かわいくなくなったんだから。あーあ、まゆみちゃんが妹だったらよかったのに。
知恵: 上杉まゆみちゃん? うん、まゆみちゃん、かわいいよねえ。
真由美: こんなとき、まゆみちゃんがいたら、タイクツしないのになあ。
知恵: でも、まゆみちゃんが妹になったら、姉ちゃんもまゆみちゃんも「やまなかまゆみ」になっちゃうよね。
真由美: そう、それよ! それが悩ましいところ。
知恵: え? マジで考えてるの?
真由美: うん、マジマジ大マジ。ていうか、アンタが「上杉まゆみ」になりゃいいじゃん。
知恵: 何それ。
真由美: 今度、チャームで一緒になったら、アンタ、上杉家に帰るのよ。ウチはまゆみちゃんと帰るから。
知恵: うわー、ひどーい。
真由美: アンタ、はるぴ〜とも仲いいじゃん。きっと、うきうき〜ずにだって入れてくれるよ。上杉まゆみとして。
知恵: えー。たしかに、はるかちゃんとは友達だけど、そういう問題じゃ……
真由美: アンタ、うきうき〜ずのポーズできるし。
知恵: いや、あれは、モノマネだから。
真由美: ハイ、では、うきうき〜ずの登場です。どうぞ!
知恵: うきうき〜ず、でーす。
真由美: オッケーじゃん。どっからどう見ても、うきうき〜ずだって。はい決定! アンタ、これから「上杉まゆみ」ね。
知恵: …………(しまった)
真由美: でも、これからアンタのこと「まゆみちゃん」っていうのもシャクにさわるのよねえ。
知恵: まだ続くの、これ。
真由美: そうそう、はるぴ〜が、隊長って呼ばれてるみたいに、なんかなかったっけ? まゆみちゃんにも。
知恵: まゆみちゃんは、うきうき〜ずの「もりあげ隊長」なんだよ。知らなかった?
真由美: それそれ! もりあげ隊長、もりあげ隊長。これから、ウチ、アンタのこと「もりあげ隊長」って呼ぶから。
知恵: …………(しまった)
真由美: で、「隊長」って呼ばれたら、はるぴ〜とアンタがふりむくの。だから、こうくわえるの。「……の、もりあげじゃないほう」
知恵: それって、はるかちゃんにもメイワクなんじゃない?
真由美: はるかちゃん、なんてなれなれしい言いかたダメじゃない。これからは、ちゃんと「隊長」って言わなくちゃ。
知恵: だって、まゆみちゃんだって、はるかちゃんって言ってるし。
真由美: まゆみちゃんはかわいいからいいの。でも、アンタはただの「もりあげ隊長」。もりあげ以外では、ちゃんとはるぴ〜の言うことききなさいよ。ただし、もりあげのときは、アンタが隊長だから。
知恵: もりあげのときって、いったいなに?
真由美: ていうか、これ、マジで面白いんだけど。ねえ、ねえ。隊長、……のもりあげのほう! って、わざわざ言うなんて、マジめんどくさいよね。
知恵: だから、それ、姉ちゃんが勝手につくったことだし。
真由美: うるさい! もりあげ隊長は、もりあげなくちゃ、隊長の地位はハクダツされるのよ。では、もりあげ隊長、どうぞ!
知恵: えー。そんな。…………うきうき〜ず、でーす!
真由美: それしかないのかよ。まったく、まゆみちゃんとは大ちがいねえ。
知恵: …………(誰のせいで、こんなことやらされてると思ってるんだ)
(完)