あやか様日記ダイジェスト


 そもそも、松本あやかって子は「手のかからないよくできた子」であったのだ。


 チャーム入りしてから、すぐ「虹色タルト」加入。普天間・梅本などのエース級が顔を並べるメンバーに、もっとも小さい身体で仲間入りした彼女。しかし、新人であることを言い訳にせず、必死で他のメンバーに追いつくようにレッスンにはげむ姿を見て、スタッフは「これは即戦力になる」と安心しきったことだろう。


 それから彼女は、ほぼ「新人育成」という期間を入れず、どんどんチャームキッズのプロジェクトに参加する。秋葉原イベントの応援隊、ケーキパニック2、チアーズ、夏季合宿、そしてDVD撮影…。気づけば、チャームのエース級として活躍するようになった彼女。


 ところが、「手間がかからない」と楽観的に思っていた松本あやかだが、実は他の子以上に厄介なことがあったのだ。それは、自分のペースを決して曲げない、ということ。


 人見知りが激しい、というのは女の子の多くがそうであって、欠点ではない。普通の子ならば、それでも、仲間を作るべく、他人に必死で合わせようとする。ところが、松本あやかは、全然そういうところがないのだ。自分が好きなものは好き、嫌いなものは嫌い、それだけなのである。


 この性格が如実に出たのが、夏季合宿である。このムービー編集が難航した理由のひとつには「松本あやかのどうしようもなさ」というのがあったと予想する。共同生活でも、他人に合わせずマイペースを貫く彼女を、どういうふうに扱うべきか、編集スタッフは大いに悩んだと思われる。


 その回答の一つが「あやか様」である。「あやか様」と呼ぶことで、自分勝手に見える部分を、媚びない気高い性格であるとわりきることにしたのだ。
(それが成功したかどうかはわからない)


 こういうふうに、困ったところのある松本あやかだが、今やチャームに欠かせず人材であるし、何よりも憎めない性格なのである。


 たとえば、指出らんムービー日記の第一話。こともあろうに、松本あやかは、主役の指出らんからカメラを奪うべく、謎のポスターでさえぎるという暴挙に出る。



 また、山田みらのムービー日記後編第二話。覚えたての「Charm of Dreamer」をカメラの前でいきなり歌いはじめ、照れてる加山しょうこも気にせずに、最後まで歌いきってしまう。



 こういうふうに「でしゃばり」なところがある彼女なのだが、これが他人をけおとす意図はまったくなく、徹頭徹尾「自分に関心を持ってもらうため」にすぎないところが、彼女の持ち味。つまり、純粋なのである。


 さて、去年の9月のこと。改めて、昔のムービー日記を見ながら、アイマックススタッフは考えただろう。イベントにDVD撮影にがんばってきて、期待以上の活躍を見せた松本あやか。今ならば、ムービー日記を任せてもいいだろう。ちょっと性格に不安なところもあるけれど、いもクラ会員の人も彼女のムービー日記なら、期待してもらえるに違いない。


 スタッフ会議は、楽観的に包まれたものであっただろう。


 かつて、あやかちゃんが、あれほどまで出たがっていたムービー日記だ。自分が任せられるとなると、大喜びするに違いない。そのときは「これまで仕事がんばってきたご褒美だよ」とねぎらうのもいいかもしれない。あやかちゃんもはりきって、これまでと違う自分を見せてくれるんじゃないか。


 しかし、そんな希望的観測は、第一話にして、早くもくつがえされることになる。


「ムービー日記って、知らな〜い」


 これは、アイマックスおよびチャームキッズの製作スタッフによる、血と汗と涙の軌跡である。


第1話


 「ムービー日記って、知らな〜い」と答え、撮影を拒否しようとした松本あやか。ムービー日記始まって以来、前代未聞のこの展開に「そこをなんとか」と頼みこむスタッフ。


 もちろん「ムービー日記を知らない」というのはウソである。こともあろうに、第9話で本人がそう暴露している。スタッフも、これまで他人のムービー日記で目立とうとした彼女を知っているから、芝居染みたものだと思っていたに違いない。


 しかし、これが、とんでもない失敗であった。スタッフが「ムービー日記の許可をお願いする」と形にしてしまったため、松本あやか本人が「仕方ないからやる」という姿勢になったからである。


 この企画が立ち上がったとき、あやかちゃんなら喜んで引き受けてくれるだろう、という甘い目論見はくずれてしまった。それどころか、力関係が逆転してしまったのである。


 ちなみに、これと似た展開が「美少女学園22 松本あやかPart3」でもある。アイスを食べすぎて、お腹が痛くなった、とこぼすあやかにスタッフはあわてる。日程は組まれている。宮古島での撮影だから、一日でも延ばすことはありえない。こうして、下手に出るスタッフを見ながら、気づけば腹痛がおさまっていることに気づき、彼女は「チャーンス」と思っただろう。今なら、やりたい放題やっても許されるんじゃないか、と。それが、例の靴を投げ入れるイタズラへとつながるわけである。


 この力関係は驚くべきことに最後までくつがえることはなかった。ムービー日記の正式名称は「プライベート映像」というが、松本あやかに関しては、一瞬たりとも自分で企画した場面がないのが特徴である。ここまで撮影に非協力だったムービー日記は、もちろん、彼女以外にはない。

第2、3話


 隠しカメラ企画。演技レッスンの映像と、その後のマネさん相手の会話を収録したもの。ちなみに、こんな隠しカメラ企画が、あやか日記では、およそ半分を占める。


 演技レッスンでは、台本を与えられたばかりで、カミカミなところを見せる。寝顔を見られることを嫌がるのもそうだが、あまり練習中の素顔は見せたくないのだろう。カッコ悪い自分を見せたくないというのが、松本あやかのポリシーの一つである。


 一方のレッスン後の会話は、マネさん相手に楽しそう。徒競走でビリになったことを表情豊かに語ったりと、口からツバを飛ばすように話しまくる彼女の姿があじわえる。一方的に語らせたら、もっとも会話が面白い子だと思うんだけど(語る相手によるが)

第4話


 またもや、隠しカメラ企画。新井みやびにカメラを持たせたものの、逃げ回る彼女の姿は、スタッフを絶望に陥らせたことだろう。



 修学旅行でコケまくった話や、本番前の集中する姿など、個人的にはあやか日記のベストトラックだと思うのだが、このまま芸のない隠しカメラ企画をだらだら続けるわけにもいかないのも事実。といっても、本人の協力が期待できない状況で、今後のあやか日記の行方は、ある一人のマネージャーにゆだねられることになった。


公開当初の僕の感想記事

第5話


 後に「美少女学園22 あやかPart3」というDVDになる宮古島撮影旅行。



 このとき、「ムービー日記のネタも撮ってこいよ」と命じられたのが、いつの間にやら松本あやか保護者に認定されてしまったSマネ氏である。


 こうして、できあがった第5話はおそろしく混沌に満ちあふれている。断片的な映像の寄せ集めで、強引な編集でなんとか一つのムービーにつなぎ合わせているという感じになっている。


 これは「美少女学園22 あやかPart3」の販促ムービーとして公開されたはずだが、はじめてこれを見たとき、DVDを買うのをやめようかと思ったぐらいなのだ。それほどまで、ひどい出来である。


 しかし、「美少女学園22 あやかPart3」を見ると、この第5話の謎が解ける。


 Sマネは、ムービー日記用の映像を残す余裕なんて、まったくなかったのだ。


 「美少女学園22」のメイキングは、初日から「帰ってもいいですよ」「帰りますよ」という松本あやかの台詞からはじまるとんでもない内容だが、それは彼女が「撮影期間中は女王のようにちやほやされる」ことに気づいたからである。撮影を成功させるため、スタッフもマネージャーも下手に出ざるをえない。口ではいろいろ言っているけれど、本当はきちんとした作品ができるかどうか、不安でたまらないんだ。そんな力関係を何回も撮影を重ねるうえで、彼女は知ってしまったのである。


 そんな彼女をなだめたり叱ったりと、Sマネ氏はさぞかし大変であっただろう。ハンドカメラを持たせてみても、とても映像になるようなものを残してくれない。第5話の内容がめちゃくちゃなのは、それだけSマネががんばった証である。

(この第5話は、DVDを見たあとで、オマケとして楽しむと、実に面白い)


 もちろん、その努力をアイマックス側も知っている。それゆえに、第5話はSマネに同情的な編集になっている。しかし、このままで終わるわけにはいかなかった。ビーチパニックにイケメンマネージャーとして出演を果たしたことのあるSマネ氏が、たかが松本あやかのムービー日記で敗北するわけにはいかなかったのである。

第6,8話


 これは完全Sマネプロデュース。第5話での失態のばん回のチャンスを与えたアイマックスの寛大さに感謝しつつ「次は失敗してはならぬ」と固い決意を見せたSマネは、日々の仕事の中で、なんとか松本あやかをその気にさせる企画を模索する。


 こうして、作られたのが今回の企画。一言でいえば、上杉まゆみ太鼓の達人対決をさせる、というものだが、これが考えに考えを重ねた企画であることは間違いない。


 まず「太鼓対決」。松本あやかのプロフィールには「特技 和太鼓」とある。チャームキッズの活動で太鼓を披露する機会なんてないが、プロフィールに書くぐらいだから、それなりの実力があるのだろう。こうして、太鼓をたたく姿はファンの人には新鮮に映るに違いない。


 そして、同行者は「上杉まゆみ」。演技レッスンでも仲の良い二人だが、上杉まゆみの魅力はなんといっても調子に乗りやすいこと。松本あやかが乗り気じゃなくても、上杉まゆみを乗り気にさせるのは、赤子の手をひねるが如きたやすいこと。いざ、勝負に持ちこめば、負けず嫌いなあやかのこと、これまでのムービー日記には見られない真剣さで取り組んでくれるはずだ。


 よし、完璧だぜ、とSマネはこの企画を思いついたとき、ガッツポーズの一つや二つぐらいはしただろう。


 しかし。


 そんな甘い考えを許す松本あやかではなかった。彼女は「自分が認めらる」ためには最大限の努力をするが、他人の失態をばん回に付き合うほどの、お人よしではなかったのである。



↑あやかの企画ぶち壊し発言に、オロオロするSマネ
(と、当然のようにそれをネタにしたアイマックス編集班)


 まあ、太鼓の達人対決は成功したが、その後の菓子クレーン機では上杉まゆみが叩いて落とすという不正事態が発生。大喜びする二人と、青ざめるスタッフ。


 この太鼓の達人対決ムービーは、Sマネの謝罪で終わる結果になってしまったのだが、



↑明らかに不機嫌な店員


 当の松本あやかは、その後のイベントで堂々とこのことを書いてしまい、Sマネの汚名ばん回は見事失敗に終わってしまったのだった。



↑なぜかほこらしげな松本あやか

第7話


 時間軸は、第5話と第6話の間。2006年クリスマスイブのおいも屋イベントの内容を収録。
(だから、ムービー日記用の企画というわけではない)


 山中知恵がまったく目だっていないこのムービー、主役はやはり、Sマネ。ゲテモノアイスを食べさせられ、いやがっている姿に大喜びする松本あやかの表情が、この第7話のすべてである。


 こうしてみると、第5話〜第8話までの主役は、Sマネと断言していいだろう。もちろん、当人はそのつもりはまったくなかっただろうが、松本あやかのやる気のない分、Sマネの「何とかしよう」という使命感が目立ち、その結果、Sマネがクローズアップされてしまったわけである。

第9話、第10話


 またもや、隠しカメラ企画(しかし、冒頭でみやぶられる)


 過去のムービー日記を鑑賞するという、内容のない内容。そして、第9話の最後の「次回につづく」…。


 これを見てファンは思った。ああ、これで「あやか日記」は終わるのだと。


 確かに、Sマネはがんばった。アイマックスもがんばった。本人の協力なしに第10話まで続けたのは奇跡に近い。


 しかし、これで終わっては、あやか日記が残したものは、アンチSマネ勢力だけではないか!


 正直、このままでは、アイマックス松本あやかに敗北した負け犬である。あやかに逃げ切られた敗北者である。


 そんなわけにはいかないと、最終話での驚きの重大発表。



 そう、泉はるちゃんとの北海道ロケは、この「あやか様日記」特別編だったわけである。



 この特別編、いもクラで公開されるか、おいも屋限定商品の特典映像として収録されるか、はたまた、最近復活した「U−15美少女倶楽部」で使われる可能性もあるが、泉はるがあやか様相手にどのように立ち向かったか実に興味をそそられるので、一日でも早く公開されることを切に願っている。